CHAPTER 04 / PROTECTION
主遮断装置 ── CB形とPF-S形
受電設備の中心にあって、短絡や過負荷から構内と配電線を守るのが主遮断装置です。真空遮断器を使うCB形と、負荷開閉器と限流ヒューズを組み合わせるPF-S形。2つの方式が「何をどう検出し、どうやって電流を切るのか」を比べながら、選定でどこを見るべきかを整理します。
LEARNING GOALS
この章を読み終えたらできるようになること
- 主遮断装置が何を守るために置かれているのかを説明できる
- CB形の構成(VCB・OCR・CT/VT)と、検出から遮断までの流れを説明できる
- PF-S形の構成(LBS・PF)と、短絡保護をヒューズが担うという特徴を説明できる
- 遮断器とヒューズの本質的な違い(再投入できるかどうか)を説明できる
- PF-S形の適用容量に目安の上限があり、その理由を説明できる
- 2方式を遮断能力・保護・再投入・経済性・保守の観点で比較できる
SECTION 01
主遮断装置とは何か、なぜ必要か
前の章では、構内の入口に置く区分開閉器(PAS/UGS)を扱いました。あの機器は地絡を切り離し、短絡については無電圧になるまで待つ、という役割分担でした。では、構内で起きた短絡そのものは誰が切るのでしょうか。その担い手が主遮断装置です。
主遮断装置は、受電設備の高圧回路全体を代表して開閉・保護する機器です。構内で短絡や過負荷が起きたとき、事故電流を検出して高圧回路を切り離します。設備の中心に置かれるため、単線結線図でも縦の主回路のちょうど中ほど、高圧母線の直前に描かれます。ここより下流は主遮断装置が守り、ここより上流は区分開閉器と電力会社側の保護が守る、という境目です。
- 構内の短絡電流を遮断し、機器の焼損や火災へ発展するのを防ぐ
- 過負荷が続く状態を検出し、変圧器やケーブルの過熱を防ぐ
- 事故電流を構内で切ることで、配電線への波及事故を防ぐ
- 点検・作業のときに、構内の高圧回路をまとめて停電させる
ここで「切る」という言葉の重みを確認しておきます。短絡電流は、通常の負荷電流とは桁違いに大きな電流です。それが流れている状態で回路を開くと、接点の間に強烈なアークが生じます。このアークを確実に消して電流をゼロにできる能力を、遮断能力と呼びます。断路器(DS)にこれがなく、PASにも短絡電流を切る能力がないことは前章で見たとおりです。主遮断装置とは、この能力を備えた機器のことだと考えてください。
高圧受電設備で採用される主遮断装置には、大きく2つの方式があります。真空遮断器(VCB)を使うCB形と、高圧交流負荷開閉器(LBS)と高圧限流ヒューズ(PF)を組み合わせるPF-S形です。以下、順に見ていきます。
SECTION 02
CB形 ── 検出はOCR、遮断はVCB
CB形は、真空遮断器(VCB)を主遮断装置とする方式です。CBはCircuit Breaker(遮断器)の略です。この方式では、異常を検出する役割と電流を切る役割が、はっきり別の機器に分かれています。
| 機器 | 役割 | 押さえておきたい点 |
|---|---|---|
| VCB(真空遮断器) | 指令を受けて高圧回路を開き、短絡電流を遮断する | 真空バルブの中でアークを消す。動作後も点検すれば繰り返し使える |
| CT(変流器) | 主回路の大きな電流を、継電器が扱える小さな電流へ変換する | OCRの整定はCT比を前提にするため、両者は必ずセットで検討する |
| VT(計器用変圧器) | 高電圧を計測できる電圧へ変換する | 計測・表示や、必要に応じて保護継電器の入力に用いる |
| OCR(過電流継電器) | CTからの電流を監視し、しきい値を超えたらVCBへ遮断指令を出す | 動作値と動作時間を整定でき、これが保護協調の調整代になる |
動作の流れを追ってみましょう。構内で短絡が起きると、主回路に大きな事故電流が流れます。CTがこれを縮小した電流に変換し、OCRへ送ります。OCRは整定された値と比べて異常と判断すると、VCBのトリップコイルへ指令を出します。VCBが開き、真空バルブの中でアークが消えて電流が遮断される。ここまでが一連の動きです。検出(CT+OCR)と遮断(VCB)が分業していることが分かります。
この分業がもたらす最大の利点が、整定による調整ができるという点です。OCRは「どのくらいの電流で」「どのくらいの時間で」動作するかを設定できます。これにより、下流の低圧側の保護装置が先に動くべき事故では下流に任せ、上流の配電用変電所の保護よりは自分が先に動く、といった動作の順番をつくれます。この順番づくりが保護協調です。
もうひとつのCB形の特徴は、遮断後の復旧です。VCBは動作しても消耗品を交換する必要がなく、事故原因を取り除いて点検すれば再投入できます。停電時間を短くしやすく、繰り返しの動作にも対応できるという運用上の利点があります。
SECTION 03
PF-S形 ── 短絡はヒューズ、開閉はLBS
PF-S形は、高圧交流負荷開閉器(LBS)と高圧限流ヒューズ(PF)を組み合わせて主遮断装置とする方式です。名称のPFはPower Fuse(高圧限流ヒューズ)、SはSwitch(開閉器)を表します。CB形が検出と遮断を分業していたのに対し、この方式では短絡の検出と遮断をヒューズが1つで受け持ちます。
| 機器 | 役割 | 押さえておきたい点 |
|---|---|---|
| LBS(高圧交流負荷開閉器) | 通常の負荷電流を開閉する。停電作業のときに回路を開く | 負荷電流は切れるが、短絡電流を遮断する能力は前提としていない |
| PF(高圧限流ヒューズ) | 短絡電流が流れるとエレメントが溶断し、回路を切る | 溶断特性そのものが保護特性になる。動作したら交換が必要 |
| ストライカ機構 | ヒューズが溶断したとき、ピンが飛び出してLBSを開放させる | 1相だけ溶断した状態(欠相)で運転が続くのを防ぐためのしくみ |
限流ヒューズという名前には意味があります。ふつうのヒューズは電流が流れきったところで切れますが、限流ヒューズは事故電流が最大値に達する前に溶断し、流れる電流そのものを抑え込みます。この「電流を制限する」性質のおかげで、下流の機器が受ける熱的・電磁的なストレスを小さくできます。短絡電流の遮断という点では、非常に速く、確実な手段です。
ストライカ機構にも触れておきます。三相回路で1相のヒューズだけが溶断すると、残り2相に電圧がかかったままの欠相運転になります。この状態は電動機の焼損などを招くため危険です。そこで、ヒューズが溶断すると内部のピン(ストライカ)が飛び出してLBSを機械的に開放し、三相まとめて切り離す構造がとられます。PFとLBSが組み合わされる理由のひとつがここにあります。
PF-S形の利点は、機器点数が少なく構成が簡潔なことです。OCRもCTも制御電源も原則として不要になり、盤の寸法も小さくなりやすいため、設備費・設置スペースの両面で経済的です。中小規模の需要家で広く採用されてきたのは、この経済性によるところが大きいと言えます。
一方で制約もあります。ヒューズの動作特性は製品として決まっているため、CB形のように整定で調整することができません。保護の特性を細かく合わせ込みたい場合や、下流の保護装置との協調をつくり込みたい場合には、選択の幅が狭くなります。また、変圧器を投入したときに流れる大きな励磁突入電流でヒューズが溶断してしまわないよう、突入電流とヒューズの溶断特性が両立するかを確認する必要があります。
SECTION 04
適用の目安 ── どこまでPF-S形でいけるか
経済的なPF-S形ですが、どんな規模にも使えるわけではありません。受電設備容量には一般的な適用の目安があり、それを超える規模ではCB形が選ばれるのがふつうです。
一般的には、受電設備容量がおおむね300kVA以下の範囲がPF-S形の適用の目安とされています。本アプリでも、この300kVAを候補表示の目安として扱っています。ただしこれは境界を確定する数値ではなく、あくまで「このあたりから方式の見直しを検討する」という目安です。
- 容量が大きくなるほど負荷電流も短絡電流も大きくなり、ヒューズの定格選定が難しくなる
- ヒューズは整定できないため、規模が大きく保護協調の要求が細かくなるほど不利になる
- 設備が大きいほど停電の影響も大きく、交換なしで再投入できるCB形の運用上の利点が効いてくる
- 変圧器台数が増えると励磁突入電流も大きくなり、ヒューズとの協調確認の負担が増す
SECTION 05
2方式の比較と選定の観点
ここまでの内容を整理して、両方式を並べて比べてみます。まずは構成の違いを図で確認してください。
FIG. CB vs PF-S
実物の見た目も対照的です。LBS+PFは碍子の間に3本のヒューズ筒が斜めに並んだ開放的な姿、VCBは操作部を正面に備えた箱形の姿をしています。キュービクルの扉を開けたとき、どちらの方式かは一目で見分けられます。
PHOTO (AI GENERATED IMAGE)

FIG. LBS+PF vs VCB IMAGE
| 観点 | CB形(VCB) | PF-S形(LBS+PF) |
|---|---|---|
| 遮断能力 | VCBが短絡電流を遮断する。定格遮断電流は短絡容量に応じて選定する | PFの溶断で回路を切る。限流作用により事故電流を抑え込む |
| 保護の作り込み | OCRの動作値・動作時間を整定でき、保護協調を調整しやすい | ヒューズの溶断特性が固定されており、調整の幅は限られる |
| 動作後の再投入 | 原因を取り除き点検すれば再投入できる。消耗品の交換は不要 | 溶断したヒューズの交換が必要。復旧に部品と作業を要する |
| 経済性 | 機器点数が多く、制御電源も要るため設備費は高くなりやすい | 構成が簡潔で盤も小さくでき、設備費・スペースの面で有利 |
| 保守 | 遮断器の動作確認、継電器の試験など点検項目が多い | 点検項目は少ないが、ヒューズの在庫と交換体制の備えが要る |
| 適用容量の目安 | 比較的大きな容量まで対応しやすい | 受電設備容量300kVA以下を候補表示の目安とする |
選定にあたっては、次のような観点を突き合わせて考えます。単純に「安いほう」「高性能なほう」で決まるものではなく、その施設が停電をどれだけ許容できるか、将来どう育つ計画か、誰がどう保守するのかといった条件が効いてきます。
- 01受電設備容量:まず目安の範囲に入っているかを確認する
- 02停電の許容度:復旧の速さを重視するならCB形の再投入性が効く
- 03保護協調:下流や上流との動作の順番をつくり込む必要があるかを見る
- 04将来増設:容量を増やす計画があるなら、後から方式を変える手戻りを考える
- 05保守体制:ヒューズの交換を誰がどれだけの時間で行えるかを確認する
- 06電力会社の要求:協議のなかで方式や保護に関する条件が示されることがある
SECTION 06
本章のまとめ
- 01主遮断装置は、構内の短絡・過負荷を検出して高圧回路を切り離す、受電設備の中心的な保護機器
- 02CB形は、CTとOCRで検出し、VCBで遮断するという分業の構成をとる
- 03OCRは動作値・動作時間を整定できるため、保護協調を調整しやすい
- 04PF-S形は、LBSが負荷開閉を、PFが短絡保護を担う簡潔な構成
- 05PFは限流作用で事故電流を抑え込むが、動作すると交換が必要になる
- 06ストライカ機構により、1相溶断による欠相運転を防ぐ
- 07PF-S形の適用は受電設備容量おおむね300kVA以下が目安とされる
- 08選定は容量だけでなく、停電の許容度・保護協調・将来増設・保守体制・電力会社の要求から総合的に判断する
主遮断装置を通り抜けた電気は、高圧母線を経て変圧器へ向かいます。次の章では、その変圧器と、そこから先の低圧系統を扱います。6600Vがどのように210V/105Vへ姿を変え、電灯と動力に分かれていくのかを見ていきましょう。
DIAGRAM EXPLORER
PF-S形・変圧器1台構成でたどる主遮断装置
本アプリがPF-S形・変圧器1台の構成で生成した単線結線図です。第2章で見たCB形の図にはVCBとCT/VTが並んでいましたが、この図ではかわりにLBSとPFが並びます。用語を選んで、位置と役割を確認してみてください。表示している構成は叩き台であり、機器仕様・定格・保護協調を確定するものではありません。
用語を選ぶと、図の中の位置と役割を確認できます
上の用語ボタンを選ぶと、その機器の役割の説明が表示され、 下の単線結線図で対応する図記号が強調されます。
この図はJIS C 0617を参考にした簡略表示です。正式図面ではありません。図記号・接続・機器仕様・保護協調は、 設計者および主任技術者の確認が必要です。
CHECK YOUR UNDERSTANDING
理解度チェック
全5問。選択するとその場で正誤と解説が表示されます。
Q01CB形において、短絡を検出してVCBへ遮断指令を出す役割を担うのはどれですか。
Q02PF-S形で短絡が発生し、高圧限流ヒューズ(PF)が動作したあとの復旧について正しいものはどれですか。
Q03LBS(高圧交流負荷開閉器)の役割として正しいものはどれですか。
Q04PF-S形の適用について、受電設備容量の目安として一般的に言われるのはどれですか。
Q05ストライカ機構は何のために設けられていますか。
ANSWERED 0 / 5
※ 実務適用時は関係法令・規格・メーカー資料・主任技術者の確認が必要です。
PRACTICE
手を動かして確かめる
REVIEW REQUIRED
本章の内容をそのまま実設計へ適用しないでください
本章は概念理解のための解説です。数値や適用条件は目安であり、個別案件の設計値ではありません。 実務では関係法令・規格・メーカー資料を確認し、電力会社との協議および 電気主任技術者・設計者のレビューを受けてください。