CHAPTER 03 / INCOMING
引込から受電までの機器
高圧配電線から構内へ電気が入り、主遮断装置に届くまでの区間を扱います。引込方式と責任分界点の考え方から始め、波及事故を防ぐPAS/UGSとSOG制御、取引用計量のVCT、点検のためのDS、雷から設備を守るLAまで、一つひとつの機器が「何を守るために置かれているか」を追いかけます。
LEARNING GOALS
この章を読み終えたらできるようになること
- 架空引込と地中引込の違いと、それぞれで使われる区分開閉器を説明できる
- 責任分界点と財産分界点が何の境界であり、なぜ一致しないことがあるかを説明できる
- 波及事故とは何か、それがなぜ重大な問題として扱われるのかを説明できる
- SOG制御の地絡トリップと過電流ロックが、それぞれどう動作するかを説明できる
- VCTが取引用計量のための機器であり、電力会社財産として扱われることを説明できる
- DSが無負荷でしか開閉できない理由と、操作順序の考え方を説明できる
- LAが雷サージを大地へ逃がす機器であり、接地とセットで機能することを説明できる
SECTION 01
どこから引き込み、どこからが自分の設備か
高圧受電の第一歩は、電力会社の高圧配電線から構内へ6.6kVを引き込むことです。この引込には大きく2つの方式があります。電柱を経由して架空線で引き込む架空引込と、地中に埋設したケーブルで引き込む地中引込です。どちらになるかは、その土地に来ている配電線の形態、周辺の景観や道路の条件、電力会社の供給計画などによって決まります。設計者が自由に選べるものではなく、電力会社との事前協議で確認する事項です。
| 観点 | 架空引込 | 地中引込 |
|---|---|---|
| 引込の経路 | 電柱から架空線で構内の引込柱(第1号柱)へ引き込む | 地中管路に布設した高圧ケーブルで引き込む |
| 区分開閉器 | 柱上に設置する気中負荷開閉器(PAS)が一般的 | 地上のキャビネットに収める地中線用ガス開閉器(UGS)が一般的 |
| 外観・用地 | 引込柱を建てる用地と、架空線の離隔の確保が必要 | 架空線が見えず景観を保ちやすいが、管路とキャビネットの用地が必要 |
| 点検・保守 | 柱上作業となり、高所作業車などが必要になることが多い | 地上で点検しやすいが、埋設ケーブルの事故点探査には手間がかかる |
引込方式と並んで最初に確認すべきなのが、「どこからが自分の設備なのか」という境界です。ここには性格の違う2つの境界があり、混同しやすいところです。ひとつは保安上の責任の境界である責任分界点、もうひとつは設備の所有の境界である財産分界点です。
- 責任分界点:電力会社と需要家のどちらが保安の責任を負うかを分ける点。高圧受電では、構内に設けた区分開閉器の電源側を責任分界点とする扱いが一般的です
- 財産分界点:設備を誰が所有するかを分ける点。工事の費用負担や、更新・取替を誰が行うかに関係します
この2つは一致することもありますが、必ず一致するとは限りません。分かりやすい例が、後ほど扱う計器用変圧変流器(VCT)です。VCTは需要家の構内、しかも責任分界点より構内側に置かれますが、取引用計量にかかわる機器であるため、一般的には電力会社の財産として扱われます。つまり「自分の敷地の中にある、自分のものではない機器」が存在するのです。
SECTION 02
PASとSOG制御 ── 波及事故を防ぐしくみ
構内の入口に置く区分開閉器は、受電設備の中でもとりわけ社会的な意味の大きい機器です。その理由を理解するには、まず波及事故という言葉を押さえる必要があります。
1本の高圧配電線には、ふつう複数の需要家がぶら下がっています。もし自社の構内で地絡や短絡が起きたとき、その事故電流が配電線側へ流れ出てしまうと、配電用変電所の保護継電器が動作して配電線そのものを遮断します。すると、事故とは無関係な他の需要家まで一斉に停電してしまいます。これが波及事故です。自社の設備の不具合が、地域一帯の停電という形で外部へ広がってしまう事故だと考えてください。
FIG. FAULT ISOLATION
波及事故の影響は、単に「自分が停電する」では済みません。近隣の工場の生産ラインが止まる、店舗が営業できなくなる、病院や公共施設に影響が及ぶといった形で、社会的な損失につながります。原因が自社設備であれば、社会的な信用の失墜に加え、損害賠償を求められることもあり得ます。だからこそ、構内の事故は構内で食い止めるという原則が徹底されているのです。
架空引込で広く使われるのが、気中負荷開閉器(PAS)です。柱上に設置され、内部の接点を空気中で開閉する構造から気中開閉器と呼ばれます。ただしPAS単体はただの開閉器で、事故を判断する能力は持っていません。事故を検出して開放を指令するのは、地上に取り付けられたSOG制御装置です。PASとSOG制御装置は必ずセットで機能します。現地では次のイメージのように、配電線の通る電柱にタンク状のPAS本体が装柱され、そこから引下げケーブルが構内へ向かいます。
PHOTO (AI GENERATED IMAGE)

FIG. PAS ON POLE IMAGE
SOGとは、Storage(蓄勢)、Over-current(過電流)、Ground(地絡)の頭文字です。名前のとおり、地絡と過電流という2種類の異常に対して、それぞれ違う振る舞いをします。ここがSOG制御を理解するうえで最も大事なポイントです。
| 異常の種類 | SOGの動作 | そうする理由 |
|---|---|---|
| 構内の地絡 | 地絡を検出し、PAS自身が開放して構内を切り離す(地絡トリップ) | 地絡電流は開閉器で切れる程度の大きさであり、その場で切り離せば配電線への波及を防げるため |
| 構内の短絡(過電流) | ただちには開かず、過電流が流れたことを記憶(蓄勢=ロック)しておく | PASは大きな短絡電流を遮断する能力を持たないため、通電中に開くと開閉器自体が損傷するおそれがあるため |
| 短絡後、配電線が無電圧になった瞬間 | ロックが働き、電流が流れていない状態でPASを開放する | 変電所側の遮断で無電圧・無電流になってから開けば、開閉責務を超えずに構内を切り離せるため |
過電流ロック方式の流れをもう少していねいに追ってみます。構内で短絡が起きると、大きな事故電流が流れます。SOG制御装置はこれを検出しますが、PASを即座に開くことはしません。かわりに「ロック状態」に入ります。やがて配電用変電所側の保護が動作して配電線が遮断され、線路が無電圧になります。この無電圧を検知したタイミングで、ロックされていたPASが開放されます。その後、変電所が配電線を再閉路(自動的に送電を再開)したとき、事故を起こした構内はすでに切り離されているため、他の需要家は正常に復電できる、という筋書きです。
なお、地絡検出については、単純な地絡継電器(GR)ではなく方向性地絡継電器(DGR)を組み込んだものが広く使われています。方向性を持たせるのは、構内の地絡と構外(配電線側)の地絡を区別するためです。区別できないと、他所で起きた地絡で自社のPASが開いてしまう、いわゆる「もらい事故」による不要停電が起こり得ます。とくに構内の高圧ケーブルが長い場合は対地静電容量が大きくなり、この配慮の重要性が増すとされています。
SECTION 03
UGSとの違いと、選定の考え方
地中引込の場合には、PASのかわりに地中線用ガス開閉器(UGS)が使われるのが一般的です。UGSは絶縁性能の高いガスを封入した容器の中に接点を収めた構造で、地上に据え付けたキャビネットの中などに設置します。柱上に置くPASと、地上機器として置くUGSという違いです。
ここで押さえておきたいのは、PASとUGSは「保護の考え方が違う機器」ではないという点です。どちらも構内の入口で事故を切り離す区分開閉器であり、地絡トリップと過電流ロックというSOG制御の考え方も共通しています。違うのは、引込方式に合わせた構造と設置形態です。
| 観点 | PAS(気中負荷開閉器) | UGS(地中線用ガス開閉器) |
|---|---|---|
| 対応する引込方式 | 架空引込 | 地中引込 |
| 設置形態 | 引込柱(第1号柱)の柱上 | 地上のキャビネット内など |
| 絶縁の方式 | 気中絶縁 | ガス絶縁 |
| 保護の考え方 | SOG制御による地絡トリップと過電流ロック | 同左(考え方は共通) |
| 点検作業 | 柱上作業となり高所作業の準備が必要 | 地上で扱いやすいが、ガス圧の管理という観点が加わる |
選定の考え方はシンプルです。架空引込ならPAS、地中引込ならUGS、というように、まず引込方式によっておおよそ決まります。設計者が性能を比較して好きなほうを選ぶ、という性質の判断ではありません。そのうえで、定格電流、地絡検出方式(DGRの要否)、方向性の有無、避雷器内蔵の要否といった仕様を詰めていきます。
SECTION 04
VCTと取引用計量
区分開閉器を過ぎると、次に現れるのが計器用変圧変流器(VCT)です。VCTは、その名のとおり計器用変圧器(VT)と変流器(CT)を1つの箱にまとめた機器です。高圧の電圧と大きな電流を、電力量計が扱える大きさの信号へ同時に変換します。
なぜ変換が必要なのでしょうか。6.6kVの電圧や数十アンペア以上の電流を、そのまま電力量計へ入力することは現実的ではありません。そこでVCTで比例縮小した電圧・電流をつくり、それを電力量計へ送って使用電力量を計測します。VCTと電力量計は、電気料金の計算根拠をつくる組み合わせであり、いわば商取引の計りにあたります。
この「商取引の計り」という性格から、VCTの扱いには特有の点があります。前の節で触れたとおり、VCTは需要家の構内に設置されながら、一般的には電力会社の財産として扱われます。計量の正確さは料金に直結するため、電力会社が仕様を定め、所有し、管理するという整理です。
- 設置位置は受電点の近く、責任分界点からできるだけ手前の位置とするのが一般的です
- 機器の仕様・定格は電力会社が指定し、需要家が任意に選定するものではありません
- 計量の正しさを担保するため、封印が施され、需要家側で勝手に開放・改造することはできません
- キュービクル内でVCTを収める区画は、設計段階でスペースを確保しておく必要があります
SECTION 05
DSとLA ── 点検のための開路と、雷からの保護
VCTの下流には、断路器(DS)が置かれます。断路器の役割はただひとつ、点検や修理のときに回路を確実に切り離し、目に見える開路状態をつくることです。作業する人が「ここは確かに切れている」と目で確認できることに意味があります。
重要なのは、断路器には電流を遮断する能力がないという点です。理由は構造にあります。電流が流れている接点を開くと、その間にアーク(電弧)が発生します。遮断器はこのアークを確実に消すためのしくみ(真空バルブなど)を備えていますが、断路器はそれを持ちません。したがって電流が流れたまま開くと、アークが消えずに継続し、機器の損傷、短絡事故、操作者の重大な災害につながるおそれがあります。断路器は「無負荷でしか開閉できない」のではなく、「アークを消す手段を持たないから無負荷でしか開閉してはいけない」のです。
この操作順序を人の注意力だけに頼るのは危険です。そこで実際の設備では、順序を間違えられないようにする機構的・電気的な仕組みが用いられます。これをインターロックと呼びます。たとえば、遮断器が投入されている状態では断路器の操作ハンドルが物理的に動かせないようにする、扉を開けないと操作できない位置に断路器を置き、その扉は遮断器が開いていないと開かないようにする、といった考え方です。
- 01停電作業に入るとき:主遮断装置(VCBなど)を開いて電流を止める
- 02電流が流れていないことを確認したうえで、断路器を開いて開路状態をつくる
- 03検電して無電圧を確認し、必要な範囲へ接地(短絡接地)を施す
- 04作業終了後は逆の順序で、接地を外し、断路器を投入し、最後に主遮断装置を投入する
断路器のあたりから接地側へ分岐して置かれるのが、避雷器(LA)です。避雷器は、雷によって配電線に生じた異常電圧(雷サージ)が構内へ侵入したとき、それを大地へ逃がして変圧器や遮断器の絶縁を守る機器です。通常の運転電圧では絶縁体としてふるまい、電流をほとんど流しません。ところが一定以上の高い電圧がかかると急激に導通し、サージ電流を接地へ流します。サージが去れば再び絶縁状態に戻ります。この「ふだんは絶縁、異常時だけ導通」という性質が避雷器の本質です。
ここから分かるのは、避雷器は単体では機能しないということです。逃がした電流が大地へ確実に流れる経路がなければ、電圧を抑えることはできません。つまり避雷器の性能は、接地の良否と一体です。高圧用の避雷器の接地は、一般にA種接地工事として施工し、接地抵抗値を低く保つことが求められます。避雷器を付けたのに効かない、という事態の多くは接地側の問題だと考えられています。
単線結線図での描かれ方にも特徴があります。避雷器は主回路に直列に入る機器ではないため、縦の主回路から横へ分岐し、接地記号へ至る枝として描かれます。第2章で図記号を見たときに触れた点ですが、実際の機器の役割と結びつけると、なぜそう描くのかが腑に落ちるはずです。電気の通り道に割り込むのではなく、逃がし道を用意する機器なのです。
SECTION 06
本章のまとめ
- 01引込には架空引込と地中引込があり、どちらになるかは配電線の形態と電力会社の供給条件で決まる
- 02責任分界点は保安責任の境界、財産分界点は所有の境界であり、両者は必ずしも一致しない
- 03波及事故とは、構内の事故が配電線を停電させ、無関係な他の需要家まで巻き込む事故のこと
- 04PAS/UGSはその最前線に置かれる区分開閉器で、SOG制御と組み合わせて機能する
- 05SOG制御は、地絡では即座にトリップし、短絡では過電流をロックして無電圧になってから開放する
- 06PASは短絡電流を遮断できないため、短絡保護は次章で扱う主遮断装置が受け持つ
- 07VCTは取引用計量のための機器で、構内にありながら一般に電力会社の財産として扱われる
- 08DSは電流を遮断できないため、必ず遮断器で電流を切ってから操作し、インターロックで順序を守る
- 09LAは雷サージを大地へ逃がす機器で、A種接地とセットで初めて機能し、図では接地側への分岐として描かれる
ここまでで、構内の入口から主遮断装置の手前までが揃いました。次の章では、いよいよ受電設備の中心である主遮断装置を扱います。CB形とPF-S形という2つの方式が、それぞれどのように短絡から設備を守るのかを見ていきます。
DIAGRAM EXPLORER
引込から受電までの機器をたどる
本アプリが生成した単線結線図のうち、この章で扱った引込側の機器を取り上げます。用語を選ぶと、図の中の位置と役割を確認できます。表示している構成は叩き台であり、機器仕様・定格・保護方式を確定するものではありません。
用語を選ぶと、図の中の位置と役割を確認できます
上の用語ボタンを選ぶと、その機器の役割の説明が表示され、 下の単線結線図で対応する図記号が強調されます。
この図はJIS C 0617を参考にした簡略表示です。正式図面ではありません。図記号・接続・機器仕様・保護協調は、 設計者および主任技術者の確認が必要です。
CHECK YOUR UNDERSTANDING
理解度チェック
全5問。選択するとその場で正誤と解説が表示されます。
Q01波及事故とは、どのような事故を指しますか。
Q02SOG制御の過電流ロック(蓄勢)は、構内で短絡が起きたときにどう動作しますか。
Q03断路器(DS)が負荷電流を流したまま開放してはいけないのは、なぜですか。
Q04計器用変圧変流器(VCT)の取り扱いについて、一般的な説明はどれですか。
Q05避雷器(LA)について、正しい説明はどれですか。
ANSWERED 0 / 5
※ 実務適用時は関係法令・規格・メーカー資料・主任技術者の確認が必要です。
PRACTICE
手を動かして確かめる
REVIEW REQUIRED
本章の内容をそのまま実設計へ適用しないでください
本章は概念理解のための解説です。数値や適用条件は目安であり、個別案件の設計値ではありません。 実務では関係法令・規格・メーカー資料を確認し、電力会社との協議および 電気主任技術者・設計者のレビューを受けてください。