CHAPTER 02 / OVERVIEW

受電設備の全体像と単線結線図

引込から低圧配電までに何がどの順番で並ぶのかを追いながら、キュービクルの中身を役割で整理します。あわせて、それを1本の線で描く単線結線図の読み方と、JIS C 0617の図記号の基本を身につけます。

LEARNING GOALS

この章を読み終えたらできるようになること

  • 引込・受電・変成・配電という4つの役割の流れを順に説明できる
  • キュービクル内部の区画と、そこへ収まる主な機器を対応づけられる
  • 単線結線図がなぜ1本の線で描かれるのか、何が読み取れて何が読み取れないかを説明できる
  • 開閉器・遮断器・変圧器・ヒューズ・母線などの基本的な図記号を見分けられる
  • 単線結線図の上から下へ主回路をたどり、分岐がどこから出ているかを指し示せる

SECTION 01

引込から負荷までを4つの役割で見る

高圧受電設備は多くの機器の集まりですが、一つひとつを個別に覚えようとすると全体像を見失います。まずは「電気がどの順番で、どんな処理を受けながら流れていくか」という役割の並びとして捉えるのが近道です。大きく分けると、引込・受電・変成・配電の4段階になります。

  1. 01引込:電力会社の高圧配電線から構内へ6.6kVを引き込み、構内で事故が起きたときに切り離せるようにする
  2. 02受電:取引用の計量を行い、点検時に確実に開路でき、事故時に高圧回路を遮断できる状態をつくる
  3. 03変成:高圧母線から変圧器へ分岐し、低圧(210V/105Vなど)へ降圧する。力率改善機器もここへ接続する
  4. 04配電:変圧器の二次側で主幹遮断器を設け、電灯系・動力系それぞれの低圧回路へ分ける

この並び順には理由があります。取引用の計量は責任分界点の近く、つまり構内のできるだけ手前で行う必要があります。断路器は電流を切る能力を持たないため、遮断器より電源側に置き、遮断器で電流を切ってから開放します。変圧器は保護装置を通った後の高圧母線から分岐させます。順番が意味を持つ、というのが単線結線図を読むうえでの第一のポイントです。

SECTION 02

キュービクルの中には何が入っているか

キュービクルは金属製の外箱に高圧機器を収めた設備です。外から見ると単なる箱ですが、中は役割ごとの区画に分かれており、上流から下流へ向かう電気の流れがそのまま区画の並びになっています。

FIG. CUBICLE LAYOUT

キュービクル内部の区画と役割キュービクル式受電設備の内部を、受電部、変成・遮断部、変圧・配電部、低圧部の4区画に分けて示し、 上から下へ電気が流れる順に各区画へ収める主な機器と役割を並べています。キュービクルの中身を役割で分けるCUBICLE / METAL ENCLOSED SWITCHGEAR金属製外箱・施錠管理01 / RECEIVING受電部引込ケーブル・PAS / UGS・VCT配電線から受け、取引用の計量を行う区画02 / SWITCHING変成・遮断部DS・LA・VCB(またはLBS+PF)・CT / VT点検時の切り離しと、事故時の検出・遮断を担う区画(OCR / GRなど)03 / DISTRIBUTION変圧・配電部高圧母線・変圧器・SC / SR低圧へ降圧し、力率改善機器を接続する区画04 / LOW VOLTAGE低圧部低圧主幹MCCB・分岐開閉器負荷側の低圧回路へ分ける区画POWER FLOW※ 概念図。実際の構成・特性はメーカー資料・関係規程による
キュービクル内部を役割で区分した模式図。実際の盤割り・配置はメーカーの標準仕様と現場条件によって決まります。

上の模式図を、実際に扉を開けたときの見え方に置き換えると次のイメージになります。左の区画に断路器・遮断器・計器盤が縦に並び、中央に変圧器、右に低圧の配線用遮断器がまとまり、上部を高圧母線が横断して各区画をつないでいます。

PHOTO (AI GENERATED IMAGE)

扉を開けた高圧受電盤の内部。碍子で支持された銅の母線、遮断器ユニット、ケーブル、低圧の配線用遮断器の列が区画ごとに収まっている
扉を開けた高圧受電盤の内部の例。上部を銅の母線が走り、区画ごとに機器が収められています。※ 生成AIによるイメージ写真です。実機の記録写真ではなく、機器の形状・銘板・ 端子の数などの細部は実際の製品と異なります。構造の理解は本文と図解によってください

FIG. CUBICLE INTERIOR IMAGE

キュービクル内部の機器配置イメージ扉を開けたキュービクルを正面から描いたイラスト。左に受電・主遮断区画として断路器、 真空遮断器、計器盤を、中央に変圧器区画として2台の変圧器を、右に低圧配電区画として 配線用遮断器の列を示し、上部を母線が横断しています。扉を開けると中はこうなっているINSIDE THE CUBICLE (FRONT VIEW)DSVCB(真空遮断器)OCR計器盤(電流計・電圧計・継電器)TR1 電灯TR2 動力MCCB(低圧分岐)受電・主遮断区画変圧器区画低圧配電区画高圧母線(区画をまたいで各変圧器へ)※ イメージイラスト。実際の区画割り・機器配置はメーカー設計と収容機器による
扉を開けたキュービクル内部のイメージ。受電・主遮断区画/変圧器区画/低圧配電区画という並びと、上部を横断する高圧母線を示す

区画のうち、変成・遮断部の構成には代表的な2つの方式があります。真空遮断器(VCB)を主遮断装置とするCB形と、高圧交流負荷開閉器(LBS)と高圧限流ヒューズ(PF)を組み合わせるPF-S形です。CB形は過電流継電器(OCR)で検出して遮断器で切るため、整定によって動作特性を調整できます。PF-S形は機器点数が少なく経済的ですが、短絡保護をヒューズの溶断に頼るという違いがあります。

観点CB形(VCB)PF-S形(LBS+PF)
主遮断装置真空遮断器(VCB)高圧交流負荷開閉器(LBS)と高圧限流ヒューズ(PF)
過電流の検出CTとOCRで検出し、遮断器へ指令するPFの溶断特性そのものが短絡保護を担う
適用の目安比較的大きな容量まで対応しやすい受電設備容量300kVA以下を候補表示の目安とする
確認が必要なことCT比、OCR整定、遮断容量、保護協調PF定格と溶断特性、変圧器励磁突入電流との協調、LBSの開閉責務
主遮断装置方式のおおまかな性格の違い。本アプリでは受電設備容量300kVA以下をPF-S形の候補表示の目安としていますが、適用可否・定格・保護協調は自動確定しません。

SECTION 03

単線結線図とは何か、なぜ1本の線で描くのか

単線結線図は、受電設備の構成を1本の線で表した図面です。実際の高圧回路は三相3線ですし、低圧の電灯回路は単相3線です。それでも図の上では線を1本にまとめます。これは手抜きではなく、目的に合わせて情報を絞り込んでいるからです。

単線結線図の目的は、「どの機器が、どういう順番で、どこから分岐してつながっているか」を一目で読み取れるようにすることです。もし三相の3本すべてを描いたなら、線の本数は3倍になり、機器記号も相ごとに並び、全体の構成はかえって読み取りにくくなります。構成を俯瞰するための図だからこそ、単線で描くのです。

読み取れること読み取れないこと
機器の並び順と接続の系統相ごとの結線、極性、変圧器の結線方式(Δ・Yなど)
どこから分岐しているか(母線、接地側への分岐など)実際のケーブル本数・条数・サイズ
変圧器の台数と、電灯系・動力系の分かれ方端子番号、制御回路、継電器の内部接続
主遮断装置の方式と保護機器の位置整定値、保護協調の成立、遮断容量の妥当性
単線結線図から読み取れること/読み取れないこと

本アプリが表示する単線結線図も、この「構成を俯瞰する図」として作られています。JIS C 0617を参考にした簡略表示であり、正式図面そのものではありません。図記号の適用、接続の妥当性、機器仕様、保護協調は、正式図面へ反映する前に必ず専門家の確認が必要です。

SECTION 04

JIS C 0617 図記号の読み方の基本

電気用図記号はJIS C 0617で体系化されています。すべてを暗記する必要はありません。まずは高圧受電設備で頻出する数種類を、「形がどんな機能を表しているか」という視点で覚えると、初めて見る図でも当たりをつけられるようになります。次の凡例は、本アプリの単線結線図が実際に描いている図記号をそのまま並べたものです。記号の形と、次の表の「読み方のポイント」を対応させながら確認してください。

FIG. JIS C 0617 SYMBOL LEGEND

高圧受電設備で頻出する図記号

本アプリの単線結線図と同じ描画をそのまま並べた凡例です。

開閉・遮断

SWITCHING / INTERRUPTING
  • 断路器DS

    無印の開閉接点。無負荷の状態で回路を切り離す

    使いどころ:主遮断装置の電源側。点検時の切り離しに使う

  • 高圧交流負荷開閉器LBS・PAS

    接点に○印。負荷電流を開閉できる(短絡電流は遮断できない)

    使いどころ:引込のPAS/UGS、PF-S形の主開閉器

  • 遮断器CB・VCB

    接点に箱印。短絡電流まで遮断できる

    使いどころ:CB形の主遮断装置。OCRと組み合わせて動作する

  • 配線用遮断器MCCB

    遮断器と同じ箱印を低圧側でも使う

    使いどころ:変圧器二次側の低圧分岐の保護

  • 高圧限流ヒューズPF

    線の途中の細長い箱。溶断して短絡電流を遮断する

    使いどころ:PF-S形でLBSと組み合わせて主遮断装置を構成する

変成・計測

TRANSFORMATION / METERING
  • 計器用変成器(取引用計量)VCT

    破線の枠は取引用計量のひとまとまりを表す

    使いどころ:電力会社の電力量計量。封印され需要家は触れない

  • 計器用変成器CT・VT

    大きな電流・電圧を計測・保護用の小さな値に変成する

    使いどころ:電流計・電圧計の指示、OCRへの入力

  • 単相変圧器

    縦に重なる2つの円が一次・二次の巻線を表す

    使いどころ:電灯負荷(単相3線式 105/210V)への供給

  • 三相変圧器

    記号は同じ2円で、3φの付記で三相と読み分ける

    使いどころ:動力負荷(三相3線式 210V)への供給

引込・母線・分岐

INCOMING / BUS / BRANCH
  • 引込点

    配電線からの受電点。図はここから下へ読み始める

    使いどころ:単線結線図の最上部

  • 高圧母線

    太い横線。複数の回路が分岐する共通の幹線

    使いどころ:主遮断装置の負荷側。ここから各変圧器へ分岐する

  • 避雷器+接地LA

    箱の中の三角形と、下へいくほど短くなる接地記号

    使いどころ:主回路に直列ではなく、接地側への分岐として描く

  • 進相コンデンサSC

    平行な2本の横線が電極を表す

    使いどころ:力率改善。母線または変圧器二次側からの分岐

  • 直列リアクトル付き進相コンデンサSR+SC

    コイル記号(SR)がコンデンサの上に直列に付く

    使いどころ:高調波対策・突入電流抑制を兼ねた力率改善

見分け方:同じ開閉接点でも、付加されるマークで機器が変わる

無印=DS
○印=LBS
箱印=CB

接点の斜め線は「開く」機能を表し、無印なら断路器、○印なら負荷開閉器、箱印なら遮断器と読み分けます。

※ JIS C 0617 を参考にした簡略表示。正式な図記号・付加記号は規格原文と図面の凡例による

高圧受電設備で頻出する図記号の凡例(本アプリの単線結線図と同じ描画。JIS C 0617を参考にした簡略表示)
記号の見え方表しているもの読み方のポイント
縦線から斜めに開いた線開閉機能を持つ機器(DS・LBS・遮断器など)斜めの線は接点が開くことを表す。付加記号で断路器・負荷開閉器・遮断器を区別する
円が2つ縦に重なる変圧器(一次巻線と二次巻線)2つの円が2つの巻線に対応する。相の別は記号の注記や付記で表す
線の途中に置かれた細長い長方形ヒューズ(PFなど)溶断によって回路を切る。遮断器と違い、動作すると交換が必要
太い横線母線(バスバー)そこから複数の回路が分岐する共通の幹線を表す
箱の中の三角形と、下向きの接地記号避雷器(LA)主回路に直列ではなく、接地側への分岐として描かれることに注意
短い横線が数本、下へいくほど短くなる接地大地へつながることを表す。接地の種類は記号だけでは分からない
平行な2本の短い横線コンデンサ(SC)力率改善用。直列リアクトル(SR)と組み合わせる場合はコイル記号が上に付く
高圧受電設備でよく現れる図記号の見方(簡略表現。正確な記号と付加記号は規格原典と図面の凡例で確認してください)

図を読むときのコツは、まず縦に走る主回路を上から下へたどることです。引込から始まり、開閉器、計量、断路器、主遮断装置と進み、母線に達したところで横方向に分岐が広がります。避雷器や進相コンデンサのように、主回路から横へ出ていく分岐は、主回路の流れとは別の役割を持っています。

SECTION 05

実際の図をたどってみる

ここまでの内容を、実際の単線結線図の上で確認してみましょう。次の図解では、本アプリがCB形・変圧器2台(電灯・動力)の構成で生成した単線結線図を表示しています。用語のボタンを選ぶと、その機器の役割の説明とあわせて、図の中の対応する位置が強調されます。

  1. 01まず縦の主回路を上からたどる:引込 → PAS/UGS → VCT → DS → VCB → CT/VT → 高圧母線
  2. 02母線から横へ分岐する先を確認する:電灯変圧器・動力変圧器・SC/SR
  3. 03各変圧器の下に低圧主幹(MCCB)があり、そこから低圧回路へ分かれることを確認する
  4. 04主回路から接地側へ出ている避雷器(LA)の分岐が、直列ではないことを確認する

この構成は本アプリの対応パターンのひとつです。変圧器の台数、主遮断装置の方式、付帯設備の有無によって図の形は変わりますが、「上から下へ主回路、母線から横へ分岐」という読み方は共通です。

SECTION 06

本章のまとめ

  1. 01受電設備は、引込・受電・変成・配電という4つの役割の並びとして捉えると理解しやすい
  2. 02機器の並び順は「安全に切り離せるか」という考え方から決まっている
  3. 03キュービクル内部は役割ごとの区画に分かれ、変成・遮断部にはCB形とPF-S形の2方式がある
  4. 04単線結線図は構成を俯瞰するための図であり、相ごとの結線や整定値は別の図面・検討で表す
  5. 05図記号は形と機能を結びつけて覚え、主回路を上から下へ、分岐を横へたどって読む

全体像がつかめたら、次は個々の機器へ降りていきます。引込区分開閉器がなぜ必要なのか、主遮断装置は何を守っているのか、変圧器の容量はどう考えるのか。以降の章で順に扱います。

DIAGRAM EXPLORER

CB形・変圧器2台構成でたどる主要機器

本アプリが生成した単線結線図です。用語を選ぶと、その機器の役割と図の中の位置を確認できます。表示している構成は叩き台であり、機器仕様・定格・保護協調を確定するものではありません。

用語を選ぶと、図の中の位置と役割を確認できます

上の用語ボタンを選ぶと、その機器の役割の説明が表示され、 下の単線結線図で対応する図記号が強調されます。

6.6kV 高圧受電設備 単線結線図含まれる機器は6.6kV 引込、PAS / UGS、VCT、DS、LA、VCB、CT / VT、高圧母線、電灯TR 1φ3W 150kVA 6600/210/105V、動力TR 3φ3W 300kVA 6600/210V、電灯主幹MCCB、動力主幹MCCB、SC + SR。接続は6.6kV 引込からPAS / UGS、PAS / UGSからVCT、VCTからDS、DSからVCB、DSからLA、VCBからCT / VT、CT / VTから高圧母線、高圧母線から電灯TR 1φ3W 150kVA 6600/210/105V、高圧母線から動力TR 3φ3W 300kVA 6600/210V、電灯TR 1φ3W 150kVA 6600/210/105Vから電灯主幹MCCB、動力TR 3φ3W 300kVA 6600/210Vから動力主幹MCCB、高圧母線からSC + SR。6.6kV 単線結線図JIS C 0617を参考にした簡略表示6.6kV 引込PAS / UGSVCTDSLAVCBCT / VT高圧母線電灯TR1φ3W 150kVA6600/210/105V動力TR3φ3W 300kVA6600/210V電灯主幹MCCB動力主幹MCCBSC + SR※ 図記号の適用・機器仕様・保護協調は、設計者および主任技術者のレビューを要します。

この図はJIS C 0617を参考にした簡略表示です。正式図面ではありません。図記号・接続・機器仕様・保護協調は、 設計者および主任技術者の確認が必要です。

CHECK YOUR UNDERSTANDING

理解度チェック

5問。選択するとその場で正誤と解説が表示されます。

  1. Q01三相回路であっても単線結線図を1本の線で描くのはなぜですか。

  2. Q02断路器(DS)の取り扱いとして正しいものはどれですか。

  3. Q03避雷器(LA)は単線結線図の上でどのように描かれますか。

  4. Q04高圧母線の役割として最も適切なものはどれですか。

  5. Q05計器用変圧変流器(VCT)の主な目的はどれですか。

ANSWERED 0 / 5

※ 実務適用時は関係法令・規格・メーカー資料・主任技術者の確認が必要です。

PRACTICE

手を動かして確かめる

REVIEW REQUIRED

本章の内容をそのまま実設計へ適用しないでください

本章は概念理解のための解説です。数値や適用条件は目安であり、個別案件の設計値ではありません。 実務では関係法令・規格・メーカー資料を確認し、電力会社との協議および 電気主任技術者・設計者のレビューを受けてください。