CHAPTER 06 / POWER FACTOR

力率改善(SC・SR)

同じ仕事をさせるのに、なぜ余分な電流が流れるのか。有効電力・無効電力・皮相電力の関係から力率を理解し、高圧進相コンデンサ(SC)と直列リアクトル(SR)が何を担っているのかを整理します。

LEARNING GOALS

この章を読み終えたらできるようになること

  • 有効電力・無効電力・皮相電力の関係を、直角三角形のイメージで説明できる
  • 力率が悪いと何が起きるかを、電流・損失・設備容量・料金の4点から説明できる
  • SCが遅れ無効電力を打ち消すしくみと、容量を考えるときの前提を説明できる
  • SRが高調波の拡大防止と突入電流抑制のために組み合わされることを説明できる
  • コンデンサ回路の開閉・放電・再投入で気をつける点と、過補償の問題を説明できる

SECTION 01

力率とは何か

電動機や変圧器のように磁界を作って動く機器では、電源から送られた電気のすべてが仕事に変わるわけではありません。一部は磁界を作ったり消したりするために電源と負荷の間を往復するだけで、正味の仕事をしません。この「往復するだけの分」を無効電力と呼びます。

実際に仕事をする分が有効電力(P、単位はkW)、往復するだけの分が無効電力(Q、単位はkvar)、そして電源から見た見かけ上の電力が皮相電力(S、単位はkVA)です。この3つは互いに直交する関係にあり、有効電力を底辺、無効電力を高さ、皮相電力を斜辺とする直角三角形として描けます。力率は、この斜辺に対する底辺の比、つまり P ÷ S として表されます。

FIG. POWER FACTOR

有効電力・無効電力・皮相電力の関係と力率改善有効電力を水平方向、無効電力を垂直方向、皮相電力を斜辺とする直角三角形で電力の関係を示し、 高圧進相コンデンサを入れて無効電力を減らすと、皮相電力が小さくなり力率角が小さくなることを表しています。力率と、進相コンデンサ(SC)による改善POWER TRIANGLE有効電力 P [kW]無効電力 Q [kvar]力率角 θP:有効電力(実際に仕事をする分)Q:無効電力S:皮相電力機器の磁界などに使われ、往復するだけの分設備容量に効く合成値SC で Q を打ち消すと皮相電力 S が小さくなる力率は P ÷ S で表します。Q を減らすと同じ P でも S が小さくなり、設備・配線の余裕が増えます。コンデンサ容量、直列リアクトル(SR)の要否、高調波対策は個別の検討が必要です。※ 概念図。実際の構成・特性はメーカー資料・関係規程による
有効電力・無効電力・皮相電力の関係と、SCによる改善のイメージ。無効電力Qを減らすと、同じPでも皮相電力Sが小さくなります。

力率が1.0であれば、電源から送った電気がすべて仕事に変わっている状態です。力率が0.8であれば、同じ仕事をするのに1.0のときより多くの皮相電力を送る必要があります。つまり、力率は「電気の使い方の効率」を表す指標だと考えられます。

用語記号と単位意味力率0.8で100kWを使う場合の例
有効電力P[kW]実際に仕事へ変わる分100kW
皮相電力S[kVA]電源から見た見かけ上の電力。設備容量に効く100 ÷ 0.8 = 125kVA 程度
無効電力Q[kvar]磁界などのために往復するだけの分三角形の残りの辺として75kvar 程度
3つの電力の関係(数値は関係を理解するための概算例であり、実際の設備値ではありません)

もうひとつ押さえておきたいのが「遅れ」と「進み」です。電動機のようなコイル性(誘導性)の負荷では、電流が電圧より遅れます。これを遅れ力率と呼びます。反対に、コンデンサ性(容量性)の回路では電流が電圧より進みます。一般的な工場やビルの負荷は電動機が多く、全体としては遅れ力率になることがほとんどです。だからこそ、進み側の性質を持つコンデンサを足して打ち消す、という発想が出てきます。

SECTION 02

なぜ力率が悪いと損なのか

力率が悪いと、同じ有効電力を得るためにより大きな電流を流すことになります。電流が大きくなると、そこから連鎖的にいくつもの不利が生じます。

  1. 01電流の増加:同じ有効電力に対して、力率が低いほど電流は大きくなります
  2. 02損失の増加:電線や変圧器巻線での損失は電流の2乗に比例するため、電流が増えると損失は急に大きくなります
  3. 03電圧降下の増大:電流が大きいほど配線での電圧降下も大きくなり、末端の機器の電圧が下がりやすくなります
  4. 04設備容量の圧迫:変圧器・遮断器・ケーブルはkVA(皮相電力)や電流で選ぶため、無効電力の分だけ設備の余裕が食われます
  5. 05電気料金への影響:力率に応じて基本料金が割り引かれる/割り増される制度が一般的に採用されています

設備容量の圧迫は、増設を検討する場面で特に効いてきます。変圧器の容量に余裕がないと思っていたら、実は無効電力が容量を食っていただけで、力率を改善したら余裕が生まれた、というのはよくある話です。新しい変圧器を買う前に、力率の状態を確認する価値があります。

電気料金については、高圧受電の契約で力率割引・力率割増という制度が一般的に用いられています。おおまかには、基準となる力率(85%が基準とされることが多いと言われます)に対して、実際の力率が良ければ基本料金が割り引かれ、悪ければ割り増される、という考え方です。ただし、基準値、割引率、力率の測定方法(月間平均か、時間帯別かなど)は電力会社・契約種別・小売事業者によって異なります。

SECTION 03

高圧進相コンデンサ(SC)の役割

高圧進相コンデンサ(SC:Static Capacitor、または高圧進相コンデンサ)は、力率改善のために高圧母線から分岐して接続する機器です。コンデンサは進み無効電力を出す性質を持つため、負荷が持つ遅れ無効電力と互いに打ち消し合います。結果として、電源から見た無効電力が減り、皮相電力が小さくなって力率が改善します。

ここで大事なのは、SCが有効電力を減らすわけではないという点です。実際に仕事をする分は変わりません。変わるのは、その仕事をさせるために電源側から流れてくる電流の大きさです。前の節の直角三角形でいえば、底辺(P)はそのままで、高さ(Q)が縮み、斜辺(S)が短くなるイメージです。

では、どれだけの容量のコンデンサを入れればよいのでしょうか。基本的な考え方は、「現在の負荷が持つ遅れ無効電力」と「目標力率にしたときに残ってよい遅れ無効電力」の差を、コンデンサで補うというものです。そのためには、有効電力(あるいは契約電力)、現状の負荷力率、そして目標力率が分かっている必要があります。

確認する項目なぜ必要か
有効電力(負荷の実態、契約電力など)打ち消すべき無効電力の大きさは、有効電力と力率の組み合わせから決まるため
現状の負荷力率どれだけ遅れているかが分からないと、補う量を決められないため
目標力率どこまで改善するかによって必要容量が変わるため。過剰に入れると進み側へ振れてしまうため
負荷の変動(時間帯・季節・稼働状況)軽負荷時に固定容量のコンデンサが入りっぱなしだと過補償になりやすいため
高調波の環境(インバータ機器などの有無)SRの要否や、コンデンサ回路が高調波を引き込むリスクの検討に必要なため
自動力率調整(APFC)の有無負荷変動に応じて段階的に投入・開放する構成では、分割の考え方が変わるため
SC容量を検討するときに必要になる情報(いずれも案件ごとに確認が必要です)

本アプリでも、契約電力や設備容量からSC容量の「目安」を表示します。ただしこれは、入力値におおまかな比率を掛けて標準容量へ丸めただけの参考表示であり、上の表に挙げた条件を反映したものではありません。表示は必ず「要確認」の扱いとしており、正式な容量は目標力率・負荷力率・負荷変動・高調波環境・電力会社との協議をふまえた計算で決めます。

SECTION 04

直列リアクトル(SR)はなぜ必要か

高圧進相コンデンサは、多くの場合そのまま単体では使わず、直列リアクトル(SR:Series Reactor)と組み合わせて設置します。SRはコンデンサと直列に入るコイルで、大きく2つの役割を持っています。

  1. 01高調波の拡大防止:コンデンサ回路が高調波電流を過度に引き込んだり、系統のインダクタンスと共振して電流・電圧を拡大させたりすることを防ぎます
  2. 02突入電流の抑制:コンデンサを投入した瞬間に流れる大きな充電電流(突入電流)を抑え、開閉器やコンデンサへの負担を軽くします

PHOTO (AI GENERATED IMAGE)

盤内に並んで据え付けられた2台の鋼板タンク。上部の碍子どうしが銅の導体でつながれている
盤内に据え付けられた進相コンデンサと直列リアクトルの例。上部の導体で直列につながれています。※ 生成AIによるイメージ写真です。実機の記録写真ではなく、機器の形状・銘板・ 端子の数などの細部は実際の製品と異なります。構造の理解は本文と図解によってください

FIG. SC + SR IMAGE

進相コンデンサと直列リアクトルの外観イメージ左に直列リアクトルSR、右に高圧進相コンデンサSCの箱形の本体を描き、 母線からの電源がまずSRを通ってからSCへ直列に接続される様子を 接続導体とともに示したイラスト。SCとSRの外観 ── 電源側にSRが直列に入るSHUNT CAPACITOR & SERIES REACTOR高圧母線からSRを通ってからSCへ(直列)SR直列リアクトル中身は鉄心+コイルSC高圧進相コンデンサ内部は素子+絶縁油。放電装置を内蔵ブッシング放熱スリット鋼板タンクどちらも「箱にブッシングが生えた」よく似た外観です。回路上はSRが必ずSCの電源側に直列へ入ります。据え付け時は放熱と点検のスペースを確保します。※ イメージイラスト。実際の形状・端子数・冷却構造はメーカー・容量による
SCとSRの外観イメージ。どちらも鋼板タンクにブッシングが付いたよく似た姿で、回路上はSRが必ずSCの電源側に直列へ入る

共振という言葉が出てきました。コンデンサは周波数が高いほど電流を通しやすく、コイル(インダクタンス)は周波数が高いほど通しにくいという、正反対の性質を持っています。この2つが組み合わさった回路には、両者の影響が釣り合って電流が極端に流れやすくなる周波数が存在します。これが共振です。

インバータや整流器などの機器からは、基本波(50Hzまたは60Hz)の整数倍の周波数を持つ高調波電流が流れ出します。実際の系統でよく問題になるのは第5次高調波(基本波の5倍)です。もし、コンデンサ回路と系統のインダクタンスの組み合わせによる共振点が第5次高調波の近くにあると、わずかな高調波でも大きな電流が流れ、コンデンサの過熱や機器の障害につながる恐れがあります。

そこでSRを直列に入れ、コンデンサ回路全体としてはコイル性(誘導性)に見えるようにします。こうすると、共振点が第5次高調波より低い側へ移り、高調波を拡大しにくい状態になります。この目的で一般的に用いられているのが、コンデンサ容量に対して6%のリアクタンスを持つSR(いわゆる6%リアクトル)です。ただし、高調波の含有率が高い環境では、より大きな%リアクトル値のものが検討される場合もあります。

SECTION 05

開閉・放電と、過補償という落とし穴

コンデンサ回路の扱いには、他の機器にはない独特の注意点があります。コンデンサは電荷をためる機器なので、「投入した瞬間」と「開放した後」の両方に配慮が必要になるのです。

まず投入時です。放電しきったコンデンサへ電圧をかけると、一瞬だけ非常に大きな電流(突入電流)が流れます。これは開閉器の接点を傷めたり、コンデンサ自体の寿命を縮めたりする要因になります。前の節で触れたとおり、SRを直列に入れることで、この突入電流も抑えられます。複数のコンデンサ群を切り替える構成では、既に投入されている群から流れ込む電流も考慮する必要があります。

次に開放後です。コンデンサは開放しても電荷を保持したままになり、端子間に電圧が残ります。これは点検作業者にとって危険であり、また電荷が残った状態で再投入すると、残留電圧と電源電圧の差によって過大な電流や過電圧が生じるおそれがあります。そのため、コンデンサには放電抵抗や放電コイル(放電装置)を備え、開放後に電圧を下げるようにします。

  • 放電装置には、抵抗によって放電する方式と、放電コイルを用いる方式があります
  • 開放してから再投入するまでには、残留電圧が十分下がるだけの待ち時間を確保します
  • 必要な待ち時間は放電装置の方式や仕様によって異なるため、メーカー資料で確認します
  • 点検で充電部に触れる前は、残留電荷を確実に放電させたうえで検電・接地を行います
  • 自動力率調整(APFC)を使う場合は、頻繁な開閉にならないよう制御条件を検討します

最後に、力率改善のもうひとつの落とし穴である過補償に触れます。コンデンサ容量が大きすぎると、遅れ無効電力を打ち消しきったうえでさらに進み側へ振れてしまいます。これが進み力率(過補償)の状態です。三角形のたとえで言えば、高さを縮めるつもりが、下向きに突き抜けてしまった状態です。

起きること考え方
皮相電力がかえって増える進み側へ振れた分だけ無効電力が生じるため、力率は1.0から離れ、電流も増えていきます
受電端の電圧が上昇する傾向軽負荷時に進み無効電力が大きいと、電圧が上がりやすくなることがあります
料金上の不利が生じ得る進み側の力率を割引の対象としない契約もあり、期待した効果が得られないことがあります
系統側との相互影響進み無効電力は構内だけの問題にとどまらないため、電力会社との協議事項になり得ます
過補償(進み力率)で懸念される事象(一般的な傾向であり、実際の影響は系統条件によります)

過補償は、夜間や休日のように負荷が軽い時間帯に起きやすいのが特徴です。昼間のピーク負荷に合わせてコンデンサ容量を決め、それを常時投入したままにすると、負荷が減った時間帯に進み側へ振れてしまいます。負荷変動が大きい設備では、コンデンサを複数に分割し、力率に応じて自動で投入・開放する自動力率調整(APFC)が検討されます。

SECTION 06

本章のまとめ

  1. 01有効電力P・無効電力Q・皮相電力Sは直角三角形の関係にあり、力率は P ÷ S で表される
  2. 02力率が悪いと電流が増え、損失・電圧降下・設備容量の圧迫・料金の不利につながる
  3. 03SCは進み無効電力で負荷の遅れ無効電力を打ち消し、皮相電力を小さくする
  4. 04SC容量は、有効電力・現状力率・目標力率・負荷変動・高調波環境から検討する(本アプリの表示は目安のみ)
  5. 05SRは高調波の拡大防止と突入電流抑制のために組み合わせ、一般的に6%のものが用いられる
  6. 06コンデンサ回路は放電装置と再投入までの待ち時間が前提であり、容量過大は過補償(進み力率)を招く

力率改善は、設備の中では比較的分かりやすい効果を持つ一方で、容量の決め方と高調波の扱いに専門的な検討が必要な領域です。次の章では、事故が起きたときにどこを切り離すかという保護協調と、その前提になる短絡電流の考え方を扱います。

DIAGRAM EXPLORER

高圧母線から分岐するSC/SRを図で確認する

CB形・変圧器2台構成の単線結線図です。力率改善機器が主回路のどこから分岐しているかを確認してください。表示している構成は叩き台であり、SC容量・SRの要否・仕様を確定するものではありません。

用語を選ぶと、図の中の位置と役割を確認できます

上の用語ボタンを選ぶと、その機器の役割の説明が表示され、 下の単線結線図で対応する図記号が強調されます。

6.6kV 高圧受電設備 単線結線図含まれる機器は6.6kV 引込、PAS / UGS、VCT、DS、LA、VCB、CT / VT、高圧母線、電灯TR 1φ3W 150kVA 6600/210/105V、動力TR 3φ3W 300kVA 6600/210V、電灯主幹MCCB、動力主幹MCCB、SC + SR。接続は6.6kV 引込からPAS / UGS、PAS / UGSからVCT、VCTからDS、DSからVCB、DSからLA、VCBからCT / VT、CT / VTから高圧母線、高圧母線から電灯TR 1φ3W 150kVA 6600/210/105V、高圧母線から動力TR 3φ3W 300kVA 6600/210V、電灯TR 1φ3W 150kVA 6600/210/105Vから電灯主幹MCCB、動力TR 3φ3W 300kVA 6600/210Vから動力主幹MCCB、高圧母線からSC + SR。6.6kV 単線結線図JIS C 0617を参考にした簡略表示6.6kV 引込PAS / UGSVCTDSLAVCBCT / VT高圧母線電灯TR1φ3W 150kVA6600/210/105V動力TR3φ3W 300kVA6600/210V電灯主幹MCCB動力主幹MCCBSC + SR※ 図記号の適用・機器仕様・保護協調は、設計者および主任技術者のレビューを要します。

この図はJIS C 0617を参考にした簡略表示です。正式図面ではありません。図記号・接続・機器仕様・保護協調は、 設計者および主任技術者の確認が必要です。

CHECK YOUR UNDERSTANDING

理解度チェック

5問。選択するとその場で正誤と解説が表示されます。

  1. Q01有効電力・無効電力・皮相電力の関係として正しいものはどれですか。

  2. Q02力率が悪いことによる不利として、適切でないものはどれですか。

  3. Q03高圧進相コンデンサ(SC)が力率を改善するしくみとして正しいものはどれですか。

  4. Q04直列リアクトル(SR)の主な役割はどれですか。

  5. Q05コンデンサ容量が過大な場合に起きる過補償(進み力率)について、正しい説明はどれですか。

ANSWERED 0 / 5

※ 実務適用時は関係法令・規格・メーカー資料・主任技術者の確認が必要です。

PRACTICE

手を動かして確かめる

REVIEW REQUIRED

本章の内容をそのまま実設計へ適用しないでください

本章は概念理解のための解説です。数値や適用条件は目安であり、個別案件の設計値ではありません。 実務では関係法令・規格・メーカー資料を確認し、電力会社との協議および 電気主任技術者・設計者のレビューを受けてください。